私は臨海鉄道が好きで定期的に訪れているのですが、その魅力の一つに旧型のディーゼル機関車であるDD13形の譲渡機、同型機、類型機(以下、DD13形ベースの機関車)が稼働しているという点があります。
昭和時代の機関車にどこか風情と温かみを感じられるといいますか。
一方で最近は一段と活躍の場が狭まってきているように思えます。
ということで今回は、令和の今でも動く様子が見られるDD13形ベースの機関車について知っていることをまとめてみたいと思います。
- 中小私鉄・臨海鉄道で稼働するDD13形ベースの機関車
- DD13形ベースの機関車が稼働数を減らす主要因
- 令和の今でも動くDD13形ベースの機関車【運用中の機体編】
- 令和の今でも動くDD13形の譲渡機、同型機、類型機【動態保存の機体編】
- 最後に
中小私鉄・臨海鉄道で稼働するDD13形ベースの機関車
DD13形とは
まずDD13形に関する簡単な説明ですが、1958年に初号機が作成された、国鉄の量産機関車としては初めて入換用をコンセプトに新製・量産された機関車になります。
当形式の導入により、これまで入換作業に従事していた蒸気機関車を順次置き換えて、ヤードの無煙化に貢献しました。
しかしながら4軸による粘着力・制動力不足、低規格路線への入線制限、SGの非搭載といった課題も抱えていたため、途中試作機の制作を経て、以降の国鉄ディーゼル機関車の量産はDE10・DE11形(DE11形はSG非搭載)へと移行しました。
中小私鉄・臨海鉄道で好まれたDD13形ベースの機関車
このように国鉄におけるDD13形の製造は中止されたものの、中小私鉄・臨海鉄道ではDD13形ベースの機関車が依然として製造され続けることになります。
なぜ国鉄がDE10・DE11形の時代になっても中小私鉄・臨海鉄道では前世代のDD13形ベースの機関車が好まれたのか。その理由は諸説あるようですが、概ね次のようなことが言われているようです。
- 1エンジン搭載のDE10・DE11形に対して、2エンジン搭載のDD13形は冗長性が確保できる
- DE10・DE11形は台車構造が複雑
など。
前者については、実際に秋田臨海鉄道のDD56(1)が引退間際まで片方のエンジンが故障した状態で稼働していたそうですね。
それ以外には、当初からDE10・DE11形を導入した臨海鉄道(新潟臨海鉄道、衣浦臨海鉄道、水島臨海鉄道)は共通してJR線への直通運用が組まれていることが、何かしら関係しているのではないかとする記述もありました。
DD13形ベースの機関車が稼働数を減らす主要因
こちらではDD13形ベースの機関車が稼働数を減らしている主要因について書いていきます。
後継機による置き換え
一つ目は、後継機による置き換えです。
もともと日本車両製の新型機関車などによりスローペースながらも置き換えが進んでいました。
しかし近年、JR線ではHD300形、DD200形の普及により、活躍の場が一段と縮小。置き換えが進んでいます。
なお、置き換えて職を失ったからといって即時解体という扱いにはならず、なかには海外へ渡るものもあるようです。
近年ですと八戸臨海鉄道のDD56形(2、3)は2020年5月頃にタイへ渡りました。
事業者自体の廃止
二つ目は、事業者自体の廃止です。
DD13形ベースの機関車が活躍する中小私鉄・臨海鉄道の中には、困難な経営状況下にあって、事業の存続自体が危ぶまれている事業者さんもいらっしゃいます。
近年ですと、太平洋石炭販売輸送(2019年6月)、秋田臨海鉄道(2021年3月)が残念ながら廃止されてしまいました。
ともに廃止理由は、主要顧客である特定の荷主の出荷停止、契約終了によるものでしたが、ここから学べることとしては、特定の荷主に偏っている、半ば特定の荷主の専用線と化している路線が経営の軸になっているような事業者さんは、荷主の判断に大きく影響を受けるということですね。
ですので、複数の荷主を確保することで一荷主から受ける影響の分散を図っておくことが肝要なのでしょうが、そんなことは百も承知でなかなかうまくいかないということでしょうから一ファンとしては見守るほかありません。
令和の今でも動くDD13形ベースの機関車【運用中の機体編】
それでは、令和の今でも動くDD13形ベースの機関車が見られる運用中の機体をまとめていきます。
岩手開発鉄道
岩手開発鉄道は岩手県で営業する貨物鉄道です。かつては旅客営業も行っていましたが、今は貨物専業になります。
日頃市線と赤崎線の2路線を保有し、両路線を直通する石灰石列車を高頻度で運行しています。
DD13形ベースの機関車としては、DD56形がしばらく4両体制で運用についていましたが、2023年に後継機のDD56形(02)が導入されたことにより、DD56形(52)が置き換えられました。そのため現在は3両になります。
DD56形は大きくわけて2タイプあり、DD53形からの編入組(51、53)と、DD56形(01)として新製されたタイプがあります。
前者は1968年~1973年に製造された形式で、DD13形とほぼ同様の性能をもつ前照灯1灯の機関車として登場しましたが、ひさしがついた運転室、運転室扉が側面にあるなど形状は異なるものとなっています。1979年にはDMF31SBIへの機関換装とともに出力向上が果たされ、前照灯2灯化とともにDD56形に編入しました。編入後、時期は不明ですがエンジンを直噴化にする改造が施されました。さらに53号機は2019年頃に機関換装を行ったそうです。
後者は1977年に製造された形式で、DD53形に類似した形状でしたが、既出のDD53形とは運転室窓が別形状かつ運転室扉が正面についているなどの相違点があります。
最後に今後についてですが、後継機の導入が継続するかどうかというところではないでしょうか。少なくともDD56形(53)は機関換装を行っているようですのでやや安泰といえるのかもしれませんが、末永い活躍を願います。
仙台臨海鉄道
臨海本線、仙台西港線、仙台ふ頭線の3路線を保有し、コンテナ、石油、レール輸送列車を運行しています。
DD13形ベースの機関車としては、SD55形(103)が1両稼働しています。
SD55形(103)はもともとDD55形(1)として1971年に登場した機体で、のちに製造されたSD55形と同様の機関へ換装した際に同形式に編入しました。
最後に今後についてですが、DE10・DE11・DE15形ベースのKE65形が運用についており、既に風前の灯火となっています。執筆時点ではまだ稼働しているようですが、いつまで活躍してくれるのかというところです。
福島臨海鉄道
福島臨海鉄道は福島県で営業する貨物鉄道です。
本線1路線を保有し、コンテナ、鉱石列車を運行しています。
DD13形ベースの機関車としては、DD55形(31)とDD56形(1)が1両ずつ稼働しています。
前者のDD55形(31)は、1973年に製造された機体で、もともとはDD55形(3)
を名乗っていましたが、機関換装時に現在の番号に改められました。
後者のDD56形(1)は、1978年に製造された機体で、もともとはDD56形(01)を名乗っていましたが、1996年の機関換装時に現在の番号に改められました。
最後に今後についてですが、2023年導入の後継機が引き続き増備されるかどうかというところではないでしょうか。
鹿島臨海鉄道
旅客営業を行う大洗鹿島線と貨物営業を行う鹿島臨港線の2路線を保有し、後者ではコンテナ列車が運行されています。なお車庫が神栖駅にある関係から、旅客車両も鹿島臨港線に乗り入れます。
DD13形ベースの機関車としては、KRD形(5)が1両稼働しています。
KRD形(5)は、成田空港の燃料輸送用に増備された1979年製造の機体になります。DD13形と比べて重量級に対応した仕様となっているようです。
最後に今後についてですが、1両と小所帯かつ現在の予備的な扱い状態から考えると、後継機の導入によりすぐに引退してしまいそうな気がしています。予備的な扱いというのは、KRD64形の検査時の代わりとして運用に入るといった形態になっているということですので、事前に目撃情報などを把握することが大切かと思います。
京葉臨海鉄道
京葉臨海鉄道は千葉県で営業する貨物鉄道です。
臨海本線1路線を保有し、コンテナ、石油、甲種輸送が運行されています。
DD13形ベースの機関車としては、KD55形(103、201)が2両稼働していますが、大きくわけて2タイプあり、譲渡機であるKD55形(103)と自社発注機であるKD55形(201)があります。
前者は、1967年に製造された元国鉄DD13形(346)を1986年に譲受した機体で、KD55形(13)として入線しました。しばらく目立った改造などはなく運用についていましたが、エンジンの直噴化により現在の番号に改められています。
後者は、1995年に製造された機体で、DD13形ベースの機関車としては最も新しい部類に入ります。近年運用を離脱したKD55形(102)に続く増備車でしたが、冷房を装備したことからKD55形(201)と名乗っています。
最後に今後についてですが、後継機としてDD200形の導入が継続するかどうかというところではないでしょうか。
神奈川臨海鉄道
神奈川臨海鉄道は神奈川県で営業する貨物鉄道です。
浮島線と千鳥線、本牧線の3路線を保有し、コンテナ、石油、試運転貨車、甲種輸送が運行されています。
DD13形ベースの機関車としては、DD55形(16、17、18、19)が4両稼働していますが、大きく分けて2タイプあり、従来仕様の増備車であるDD55形(16、17)と、直噴エンジンを搭載したDD55形(18、19)があります。
前者は、1979年、1981年に製造された機体になります。DD55(17)は、前照灯が飛び出していることから出目金といわれていますが、2022年に機関換装が行われているようです。
後者は、1992年、1994年に製造された機体になります。既述のKD55(201)と合わせて、各社のDD13形ベースの機関車としては最も新しい部類に入ります。
最後に今後についてですが、一部の機体は機関換装が行われていることから当面の間は安泰かと思います。
名古屋臨海鉄道
名古屋臨海鉄道は愛知県で営業する貨物鉄道です。
東港線と南港線、昭和町線、汐見町線、東築線の5路線を保有し、コンテナ、石灰石が運行されています。
DD13形ベースの機関車としては、ND552形(7、8、10)が3両稼働しています。(※ND552形(15)については状況不明)
ND552形(7、8、10)は、概ね1974年までに製造された機体です。他のDD13形ベースの機関車のなかでは珍しい一灯式の機関車になります。
最後に今後についてですが、名古屋貨物ターミナル駅で稼働していた譲受機が2022年にHD300形によって置き換えられました。同形式はそれ以前の2018年に東港線・南港線での試運転を行っていましたので、最近はあまり動きはないようですが、置き換えの計画も着々と進んでいるのかもしれません。
令和の今でも動くDD13形の譲渡機、同型機、類型機【動態保存の機体編】
続いて、令和の今でも動くDD13形ベースの機関車が見られる動態保存の機体をまとめていきます。
小坂鉄道レールパーク(小坂鉄道・小坂製錬)
小坂鉄道レールパークは秋田県で営業していた小坂鉄道・小坂製錬の小坂駅に設けられた複合施設です。
DD13形ベースの機関車としては、DD130形(131、132、133)が3両、DD13形(556)が動態保存されています。
柵原ふれあい鉱山公園(片上鉄道)
柵原ふれあい鉱山公園は岡山県で営業していた片上鉄道の吉ヶ原駅を含む公園で、片上鉄道保存会による動態保存が行われています。
DD13形ベースの機関車としては、DD13形(551)が1両が動態保存されています。
神岡鉱山前駅?(神岡鉄道)
詳細は不明ですが、岐阜県で営業していた神岡鉄道の神岡鉱山駅で動態保存が行われているようです。
DD13形ベースの機関車としては、KMDD13形(2)が1両が動態保存されているようです。
最後に
ということで今回は、令和の今でも動く様子が見られるDD13形ベースの機関車について知っていることをまとめてみました。
少しでもご参考にしていただけましたら幸いです。
※最新の情報にはご注意ください。
最後までブログを読んで頂き、ありがとうございました。
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