「タイミング悪く郵便局に入ってしまったときのこと」
つい先日、会社から有給休暇を頂いて久々に旅行貯金に勤しんでいた日の話です。
都区内の郵便局群を徒歩で回っていた折、とある郵便局に入店するやいなや目に入ってきたのは人だかり。
よく見るとほとんどが制服の警察官であり、人だかりの中心にはベンチに腰掛けた30代くらいの男性と女性がみえました。
何があったのだろう、と内心気になりつつも、近くに寄って耳をそばだてて聞くのもあまりよくないと思ったので、あくまでいつも通り、ひとまず入店しました。
それと瞬時に自分の中にある何かのセンサーも反応していました。
(何が起きたのかはわからないが、危険を要する人物だった場合、自分も同じ店舗にいる人間として巻き込まれてしまうのではないか)
(店内での揉め事でお取り込み中になるだろうから、今日はタイミングが悪かったとして再訪したほうが店舗側も都合がよいのではないか)
(それでも本当は有休をとっているから1店舗でも多く回りたい)
一人記入台で逡巡していると、カウンターで通常通り接客する局員さんとお客さんの姿が目に入りました。
(通常通り営業しているのなら、貯金だけだからそうそう時間はかからずに出ていける)
決心した私は入金用紙を書いて、カウンターの前へ移動しました。
しかしここで問題が発覚。
あまり広くはない店内にあって、貯金窓口の整理券発券機までの道のりは、かの揉め事の人だかりによって塞がれていたのでした。
先ほど確認できていたのは貯金窓口が開いているというところまでだったので、発券機の位置までは気が回らなかったと残念に思う自分でした。
するとどこからともなく聞こえてきた郵便窓口の局員さんの「よろしければこちらで伺いますよ」との有難いお声掛け。
心細さもあった中でのお申し出は大変有難いものではありましたが、よくよく話を聞いてみると、結局は発券機のあの用紙がないと受け付けられない、カウンターの内側からも手の届かない位置に発券機があるとのことで、自力で発券機まで移動することに。
再度決心した私は覚悟をもって、かの揉め事の人だかりとの間のわずかな隙間をすり抜けるように、それらに触らないように、なるべく揉め事に関心のない風を装って、できうる限りの手を発券機に伸ばしました。
そしてわずかに触れた紙の端を人差し指と中指の先でつまみ、そのままの全神経を集中させる形で体に引き寄せました。
これでようやく整理券が手に入った訳ですが、今日のこの時のこの瞬間の整理券ほど、整理券以上の以上の何かが手に入った感覚はありませんでした。
局員さんからは「お騒がせしてすみません」と会釈され、私も「こちらこそ(お取り込み中に旅行貯金して)すみません」とお話ししたのですが、目標達成で少し余裕が出てきたのかようやく周りの様子が目に入りだしました。
すると気が付いたのは、どのカウンターもいつもより快活に見える局員さんと、丁寧なお客さんの姿。
皆さん何かに気がつきながらも、それを決して表にはだすまいとする何かが働いているなと思いました。
俯瞰してみると、コンパクトな店内は何かで揉める人だかりと、それを気づかないものとして振る舞う異空間が広がっていたのでした。
最後までブログを読んで頂き、ありがとうございました。