気分転換をしたくなったとき、見知らぬ土地に行きたくなるのはよくあることです。
しかし実際には普段の生活が忙しいなど、長い時間をかけて離島を訪問することが難しいという方もいらっしゃると思います。
そこで着目したいのが、「離島架橋によって本土と結ばれた離島」の存在です。
離島架橋とは「本土と離島、あるいは離島と離島の間に橋を架けること」(Weblio辞書より)です。
また、使われ方によっては、離島に架けられた橋そのものを指すこともあるようです。(本記事では後者の意味で用います。)
離島架橋によって本土とつながっている離島の第一の魅力とは、船舶等の交通機関の時間を気にすることなく離島を訪問できるところにあるでしょう。
旅程を組むときにふらりと立ち寄れる。それだけで身近な存在となりえます。
そのような離島の地として今回は石川県七尾市にある能登島をご紹介します。
島の北側、西側、南側の3方向で本土に面しており、そのうち、西側と南側の2箇所に離島架橋があります。
ですので、訪問時にはこれら2つの橋を経由した一筆書きすることも可能です。
ということで今回は、これら二つの離島架橋を経由して七尾市内⇔能登島を一筆書きで回ってみたときの模様を記事にしていきたいと思います。
一筆書きの旅とは
まず一筆書きの旅とは何かですが、端的にいうと同じ場所を二回通らない旅になります。
換言すれば全ての場所が初見になる旅ともいえます。
七尾市⇔能登島における一筆書きの旅の一例を紹介
単行の気動車に乗り、アニメのモデル駅へ(七尾駅~ツインブリッジのと編)
旅は七尾駅よりのと鉄道七尾線に乗車するところから始まります。ここ七尾駅は金沢方面から延びるJR七尾線(普通列車)の終点。これより先は10:32発ののと鉄道七尾線の単行の気動車が終点穴水駅を目指します。車窓は一つ隣の和倉温泉駅を過ぎた辺りから七尾西湾がしばしば顔をのぞかせます。
のと鉄道七尾線は30分ほどの乗車で西岸駅へ。降りたホームとは反対側に改札口があるので進行方向後ろ寄りの踏切へ移動します。するとすぐに遮断機が下りて、見慣れぬ色の2両編成の列車の姿が。その正体は「のと里山里海号」2号でした。
「のと里山里海号」はのと鉄道七尾線を走行する観光列車で、水曜日を除く毎日、七尾駅と穴水駅との間を一日2往復半しています。運行を開始したのは北陸新幹線が開業した2015年の春頃とのことで、比較的新しい列車です。乗車には+500円の乗車整理券が必要で、土日祝日については飲食付きプランを選択することも可能とのことです。他にもアテンダントさんによる沿線案内、ビュースポットでの一時停止・徐行運転、鉄道郵便車の見学なども行っているそうで、移動に彩りを添えてくれる旅ができそうです。
踏切を渡ると、訪問の記念に駅名標を撮影。ですが、ここで違和感を覚えます。表示が西岸駅ではなく「ゆのさぎ」駅になっているのです。というのは2011年のアニメ「花咲くいろは」のなかで出てくる「ゆのさぎ駅」のモデルとなったのがこの西岸駅なので、それが再現されています。
駅舎の中もとても華やかです。このアニメがきっかけでのと鉄道に訪れた方々も相当数いらっしゃるのではないでしょうか。訪れた方の書いた駅ノートも分厚く束になっているのがわかります。のと鉄道では「花咲くいろは」に協力的でラッピング車両も走らせており、かつてはキャラクターによる車内アナウンスも行われたことがあったそうです。
ゆのさぎ駅こと西岸駅を堪能した後は、七尾西湾の漁港や民家を眺めながら「ツインブリッジのと」を目指して4㎞ほど歩きます。
西岸駅から1時間ほどで「ツインブリッジのと」の手前にある公園「長浦うるおい公園」に到着です。公園は駐車場付き、トイレ付き、さらに橋がよく見える展望デッキまで備えてあるので、小休止するには最適な公園です。ここに来る途中、通り雨にもあったのでベンチで少しばかりの休息です。
ちなみにこの公園に至るには徒歩のほかにコミュニティバスという選択肢もあります。目の前にある「うるおい公園」というバス停が最寄りの停留所です。今回私は西岸駅に立ち寄りたかったためにバスの時間が合いませんでしたが、同じ列車でも能登中島駅で降りていれば、コミュニティバスで来ることも可能のようでした。バスは「西岸駅―長浦うるおい公園―能登中島駅」という風に止まるので、バスの時間に合わせて西岸駅か能登中島駅か、バスの乗り継ぎが良いほうの駅を選択して訪問すると良いと思います。
能登名物「黒い屋根瓦」を望み、能登島へ(ツインブリッジのと~能登島大橋編)
小休止後は「ツインブリッジのと」により能登島へ渡ります。七尾市の中島地区から能登島へ架かる全長620mの斜張橋は正式には中能登農道橋というそう。竣工は1999年です。
渡り始めてすぐ、橋の袂のあたりでは七尾西湾に面する家々が見えます。写真からもわかりますが、黒い屋根瓦のお宅が非常に多いのが能登の民家の特徴。雪の多い能登の民家では屋根に積もった雪をいち早く溶かすために、熱を吸収しやすい黒色の屋根瓦にすることで雪に対応しているという説があるそうです。そんな特徴的な家々を「ツインブリッジのと」から眺めることができます。
「ツインブリッジのと」を渡り終えるといよいよ能登島に上陸です。そして早速、今日どれだけの車が能登島に入っていったのかを表示する電光掲示板に遭遇。振り返ってみると橋上にセンサーがあり、通過した車がカウントされていく仕組みです。実際にカウントされるのが見たくて少しその場で待ってみましたが、確かにカウントされていました。一方、歩道部分にはそのようなセンサーがないので、私のように歩いて能登島に入っていった人はどれだけいたのかというところは少し気になるところではありました。
ここから次の目的地である能登島大橋までは最短距離で7㎞強の道のりですが、西岸駅から時間をかけて歩いてきてしまったこともあって、今回は町内の路線バスを使います。「ツインブリッジのと」に最も近いバス停は600mほど歩いた先にある「通(とおり)」という停留所です。ここから能登島交通南線の公立能登総合病院方面行きのバスに乗って「大橋駐車場」で下車するのが「能登島大橋」への最短ルートです。私は旅行貯金(郵便局巡り)をしたかったので、マリンパーク島の湯方面行きの「健康センター」から能登島郵便局を訪問したのち「大橋駐車場」に下車しました。
県内最長の橋、能登島大橋で市街地方面へ(能登島大橋~和倉温泉駅編)
「大橋駐車場」はその名の通り、能登島大橋の島側にある駐車場です。そしてその駐車場の湾側にある階段を少し登ったあたりが「能登島大橋」のビュースポットになります。能登島ロードレースの写真等で何度か見たことのある構図です。
「能登島大橋」は七尾市石崎町と能登島とを結ぶ全長1050mのラーメン橋・桁橋。その長さは石川県内で最長を誇ります。この橋の竣工によって、能登島は「本土とつながった離島」となりました。1982年の竣工後16年間は「能登島大橋有料道路」として通行が制限されていたそうですが、償還後の1998年からは無料開放されています。なお、2004年まで能登島の行政を担っていた能登島町は平成の大合併によって七尾市の一部となりました。
「能登島大橋」を渡り始めて早速感じたのは横風の強さです。先ほどの無風状態だった「ツインブリッジのと」とは対照的に、「能登島大橋」では強い横風が吹きます。歩道脇の柵もそこまで高くないため、橋の縁に立って帽子やら何やらを持っていたならすぐに飛ばされてしまいそうな勢いです。「能登島大橋」は風速20m/s以上では通行止めとなるそうです。ただ「能登島大橋」が通行止めになっても、先述の「ツインブリッジのと」は通行可能ということはあるそうです。
(こちらの写真は別日に撮影したのものです)
横風の恐怖に耐えながらも無事「能登島大橋」を渡り終えると、今度は本土側のビュースポット、能登島大橋ロードパークに到着します。能登島側のビュースポットとは違って、海岸線に対して幅のある公園なので、優美な「能登島大橋」を横から眺めることができます。本土と島を結ぶ波打つ道路はまるでカモメが両翼を広げているようです。
「能登島大橋」をたっぷりと堪能した後は、和倉温泉駅に向かって歩いていきます。駅までは2㎞ほどの道のりですが、バス路線が並行しているのでバスに乗ることもできます。
駅に向かって歩いていると「和倉温泉東」交差点があります。付近には飲食店がいくつか立ち並んでいるので、ここで一休みするのも良いかもしれません。
交差点から南に行くと駅方面へ、北に行くと温泉方面になります。温泉方面には、和倉温泉の宿のほか、無料の足湯「湯っ足りパーク」で旅の疲れを癒すのも良いと思います。
二つの離島架橋によって七尾市内⇔能登島を一筆書きしてみた
ということで今回は、七尾市内と能登島を結ぶ二つの離島架橋を一筆書きする旅をご紹介しました。
※最新の情報にご注意ください。
最後までブログを読んで頂き、ありがとうございました。
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